ステマ規制 — そもそも何が変わったのか
2023 年 10 月 1 日、景品表示法 5 条 3 号に基づく内閣府告示、いわゆる 「ステマ規制」 が施行されました。事業者が自社の商品・サービスについて第三者の感想を装って広告する行為が、不当表示として明確に禁止対象となったのです。
施行から 2 年半が経過した 2026 年 5 月時点で、措置命令の事例も蓄積されつつあります。本記事では SNS 運用の現場で実際に頻発する質問を Q&A 形式で整理しました。
なお、SNS 自動投稿全般の規約論点は SNS 自動投稿の利用規約とグレーゾーン — 2026 年版 で詳述しています。あわせてご参照ください。
Q1. ステマ規制の対象になるのは誰か
A. 規制対象は「事業者」のみ です。インフルエンサー本人や一般消費者は直接の名宛人にはなりません。
ただし、事業者がインフルエンサーに依頼して投稿させた場合、その投稿が「広告であることを明示していない」と事業者側が違反主体になります。インフルエンサー側にも契約上・倫理上の責任が残るため、両者で表記ルールを合意することが必須です。
Q2.「広告」と判定される基準は
景品表示法運用基準では、次の 2 要件のいずれにも該当する場合に「事業者の表示」と判定されます。
- 事業者が表示内容の決定に関与している
- 第三者の自主的な意思による表示と一般消費者に誤認される
具体的には、対価 (金銭・商品・サービス) を提供している、ディレクションを行っている、台本を提示しているなどの事実があれば、表示内容の決定への関与ありと判断される可能性が高くなります。
「商品を無償提供したが投稿内容は本人に任せた」というケースも、無償提供という対価が存在する以上、表示として扱われる 可能性があります。
Q3. インフルエンサー施策で必須の表記は
投稿が広告であることを 一般消費者が明瞭に認識できる形 で表示する必要があります。実務でよく使われる表記は次の通りです。
<<TABLE0>><<BR>>タグの位置や色も重要です。「もっと見る」をタップしないと表示されない位置に PR 表記がある場合、明瞭性を欠くと判断される 可能性があります。
インフルエンサー施策の運用フロー全般については インフルエンサーマーケのキャスティング実務 もあわせてご覧ください。
Q4. よくある違反パターン 5 つ
施行後の措置命令事例や消費者庁の運用基準から、頻出する違反類型を 5 つ挙げます。
1. 自社社員のなりすまし投稿
社員が一般ユーザーを装って自社商品をレビューする行為は、典型的なステマです。社内アカウントポリシーで明確に禁止する必要があります。
2. 報酬を伏せたアフィリエイト記事
「個人ブロガーの感想」として書かれた記事に、実は高額のアフィリエイト報酬契約がある場合。アフィリエイトであることの明示 が必要です。
3. ギフティング後の「自発的投稿」演出
商品の無償提供 + 投稿依頼の組み合わせは、たとえ「自由に書いてください」と伝えていても広告に該当します。
4. レビューサイトへの組織的書き込み
事業者が自社や代理店経由で口コミ投稿を組織的に行うケース。
5. 二次拡散の取り扱い忘れ
インフルエンサーの PR 投稿を公式アカウントが RT / リポストする際、元投稿に PR 表記がついていれば二次拡散側の追加表記は不要 ですが、引用形式で要素を切り出す場合は再度表記が必要になります。
Q5. 社内チェックフローはどう組むべきか
ICHIYAJO で運用支援している企業の標準フローを共有します。
- 施策設計時: 契約書に PR 表記義務・違反時の修正期限・損害賠償条項を明記
- 入稿時: マーケ担当 + 法務担当の 2 名で PR 表記の位置・サイズ・タグを確認
- 投稿直後: 担当者が公開後 1 時間以内にスクリーンショットを保存
- 月次: 投稿一覧と表記の有無を CSV 化し、社内監査
- 年次: ガイドライン全文を見直し、新類型 (AI 生成等) を反映
特に 入稿前チェックリストの標準化 は、属人化を防ぐうえで効果が大きい施策です。
Q6. 違反した場合の措置命令と課徴金
ステマ規制違反の主な行政措置は次の通りです。
- 措置命令 (景表法 7 条): 違反行為の差止め、再発防止策の実施、消費者への周知公表
- 課徴金 (景表法 8 条): 該当売上額の 3% (要件を満たす場合)
- 企業名公表: 措置命令の事実が消費者庁ウェブサイトで公表される
- 取引先からの信頼喪失: 上場企業の場合、開示義務と株価への影響
施行直後の 2024 年には複数の措置命令事例が出ており、特に 「広告」表記が冒頭ではなく投稿末尾の小さなハッシュタグだったケース が問題視されています。表記は 明瞭・近接・継続 の 3 原則を意識してください。
Q7. AI 生成コンテンツとステマの交差点
生成 AI で作成したレビュー文章を、あたかも人間が書いたかのように投稿することもステマ規制の射程に入りえます。さらに各 SNS の AI 表示ポリシー (Instagram の AI ラベル、X の合成メディア表示) との整合性も必要です。
AI 生成 × 広告 の組み合わせは、ダブルの表示義務が発生する点に留意してください。
まとめ — 表記コストはリスクヘッジ投資
ステマ規制への対応は、短期的には表記の手間という「コスト」に見えがちですが、中長期では ブランド毀損リスクの保険料 として極めて費用対効果の高い投資です。
ICHIYAJO の 営業代行 と AI コンサルでは、SNS 施策の景表法レビュー・社内ガイドライン策定・インフルエンサー契約書テンプレートの整備までをワンストップでご支援しています。GrowX を含む自社プロダクトの運用設計もすべて本記事のフレームに沿って構築されています。
お問い合わせは 080-1542-2956 (平日 10-19 時) まで。
⚠️ ディスクレーマー: 本記事は 2026 年 5 月時点の景品表示法・運用基準・公表事例に基づく一般的な解説です。個別事案におけるステマ規制の適用判断や違反該当性については、弁護士法・法令解釈の最終判断は専門家にご相談ください。